- 遺言制度とは
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人が死亡すると相続が開始され、遺産はその相続人が承継することになります。
遺言制度は、生前に遺言という書面を法律が定める方式に従って書くことによって、死後の自分の財産の帰属を、自分の意思で自由に決めることができるという制度です。その存在意義は、生前に認められていた自分の意志に基づく財産処分の権限を、その死後においても実現していくことにあります。「遺言」の読み方ですが、法律上では「いごん」と読みます。ただ、一般社会においては通常、「ゆいごん」と呼ばれています。
遺言のすすめ
家族のために、相続の準備はできていますか?
こんなお悩みはありませんか?
- 遺言をするかどうかで迷っている
- 自筆証書遺言で足りるか、公正証書遺言にすべきか迷っている
- 自筆証書遺言をしたが、法律の要件を満たしておらず、効力がないのではないかと心配している
- 長男に事業を継承させたいが、遺言書でどう書けばよいのかわからない
- 自分の老後の世話をしてくれた人にも遺産を分けたい
- 遺留分を侵害しないようにするにはどうしたらよいかわからない
- 相続税がどれくらいになるのかわからない
確実に効力を生じさせる為に
- 遺言の作成にあたっては、
専門家のアドバイスを
受けることが必須です。 -
遺言は厳格な要式行為であり、法律の規定する要件、
きまりから外れると効力が生じません。
あなたが死亡してからでは、訂正がきかないのです。また、遺留分侵害を回避する必要もありますし、
相続税の節税及び支払資金の確保という問題もあります。
これらを総合的に考慮して、遺言の内容を決める必要があるのです。
【01】遺言をする目的は
- 01遺言をする目的は、まず、相続の対象となる自己の財産を明らかにする
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相続の対象となる財産には、土地建物などの不動産、銀行預金、株式、その他の有価証券などがあります。不動産は相続の対象として重要なものであり、相続人はその存在を認知していることが通常でしょうが、銀行預金や株式などの有価証券などは、その詳細を相続人が正確に把握していることはあまりないでしょう。したがって、相続の対象となるものを明確にする目的があります。
さらに、これまで銀行預金や有価証券などそれを示す紙があり、視覚的にその存在を認識することができましたが、いまやペーパレス化の時代であり、預金通帳や株券、その他有価証券は存在しなくなり、データ化されて、口座番号、ID、暗証番号などで管理されるようになっています。したがって、その存在を明確に示しておかないと、相続人には相続財産の内容がわからないという社会になっています。
その意味で、遺言の重要性がますます高まってきています。
なお、負債についても、その明示がないと相続人が知覚することが困難です。
負債の額によっては、相続人は、相続放棄や限定承認も検討しなければならないこともあるので、その明示は重要です。
- 02死後の自分の財産の帰属を自分の意思で自由に決める
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もし遺言がなければ、自分の財産は法定相続によることになり、民法の規定に従い、相続人が法定された相続分(相続財産に対する一定割合)を取得することになります。そして、実際の遺産をどのように分けるかは、相続人全員による話合い(遺産分割協議)によって決められることになります。そのため、自分の意思は相続にまったく反映されません。
- 03相続人間の紛争を予防する
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上記の通り、遺言がないと法定相続となり、相続人間で遺産分割協議を行うことになりますが、その具体的分割方法を巡り、相続人間で紛争が生じることがままあります。
遺言をすれば、この相続人間の争続問題を未然に防止することができます。
【02】遺言の機能は
上記のような目的をもつ遺言ですが、これをその機能という面から見ると、次のようになります。
- 01遺産分割協議が不要となる
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遺言をして、どの相続人にどの財産が帰属させるのかを具体的に決めておけば、遺産分割協議が不要になり、遺産分割方法を巡って紛争が生じることがなくなります。
- 02相続分の割合を自由に決めることができる
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相続人の中でも、例えば、配偶者や後継者である子供に、他の相続人よりも多くの遺産を承継させたい場合もあると思います。
その場合、遺言をすることにより、法定の相続割合より多くの遺産を承継させることができます。
但し、各相続人の遺留分(最低限の相続分)を侵害することはできないという制限はあります。
- 03相続人以外の人に遺産を与えることができる
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子供や配偶者といった相続人ではないが、生前お世話になった人や、孫といった相続人以外の人に遺産を渡すことを希望する場合があると思います。
その場合、遺言をすることにより、遺産を承継させることができます。
【03】特に遺言をしておいたほうがよい方
上記のような遺言の目的、また機能からすると、次のような方は、遺言をしておくことが特に必要であると言えます。是非、遺言書の作成をご検討すべきです。
- 01法定相続分とは異なった財産分けを望む方
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子供は自立して将来の生活に不安はないので妻に2分の1(法定相続分)以上の財産を与えたいというような場合が典型です。
また、自己の事業を継承した子供とか、生前自分と同居し生活の面倒を見てくれた子供に、多めの財産を与えたいとういような場合もあると思います。
- 02特定の相続人に特定の財産を相続させたい方
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自宅は子供との共有ではなく妻の単独財産として妻に、自分の会社の株式は事業を承継した子供に、農地は農業を継いでくれた子供に、それぞれ相続させたいというように、ある特定の財産を特定の相続人に相続させたいという場合には、まさに遺言が機能します。
- 03相続人が多い方
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相続人が多いと遺産分割協議がうまくいかず、争いになる可能性が増加します。特に、子供のない夫婦は、その相続人の範囲が、存命であれば自分の親、存命でなければ自分の兄弟姉妹となります。兄弟姉妹が死亡している場合はその子(甥、姪)も相続人になってきます。このような場合に、遺産分割協議の対象となる財産が相応にある場合は、その協議はなかなか円滑には進みません。
- 04身分関係が複雑な場合
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前妻との間の子と、後妻との間の子がいるといった場合、相続人間の関係が疎遠であることが多く、紛争になってしまうことが多々見られます。
【04】遺言は厳格な要式行為専門家に
相談すべき
遺言のやり方は、遺言書という書面を作成して行いますが、この書面は法律が定める方式に従うことが必須となります。
すなわち、遺言は、民法の定める方式で行わなければなりません。遺言は、遺言者の死亡の時からその効力が生じますが(民法985条1項)、効力の発生した後に、遺言者に遺言に関する真意を確認することができないので、遺言者の真意を明確なものにするとともに、偽造や変造を防止する必要性が強いため、民法は遺言を行うやり方に関し厳格な方式を規定しています。そして、この規定を遵守しなければ、法律上の効力を生じません。
- 01遺言ができる事項は法定されている
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遺言の内容とすることができる事項(遺言事項。遺言をすれば法的に効力が生じる事項)は、民法により規定されていますが、その重要なものは下記のものです。
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① 相続に関する事項
[相続分の指定] 相続人間における相続分の割合を指定することです。
[遺産分割方法の指定] 自宅は妻に、会社株式は長男に、農地は次男にというような指定です。 -
② 相続以外の財産の処分(遺贈)に関する事項
遺言者は遺言書に記載することにより、財産を受け渡したい相手に自分の財産を譲り渡すことができます。
相続というのは、法定相続人だけを対象とするものですが、遺贈は法定相続人以外の者に対しても行うことができます。遺贈をする相手には条件や制限などはありません。法定相続人でも構いませんし、第三者や法人等に遺贈をすることも可能です。
遺贈にも2つの種類があります。(1)包括遺贈
包括遺贈とは、相続財産の全部または一定の割合分を遺贈するもので、下記のようなものです。
- 遺言者は、遺言者の有する相続財産の3割を○○△△に遺贈する
- 遺言者は、遺言者の有する相続財産の3割を遺言者の内縁の妻である○○△△に遺贈する
(2)特定遺贈
特定遺贈とは、遺言者が財産の中から特定したものを指定した人に遺贈するもので、下記のようなものです。
- 遺言者は、遺言者の有する次の土地を遺言者〇〇△△に遺贈する
- 遺言者は、遺言者の有する〇〇株式会社の株式1000株を□□○○に遺贈する
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③ 身分に関する事項
遺言で認知する遺言認知が可能です。
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- 02遺言の方式も法定されている
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民法は、普通方式の遺言と特別方式の遺言を定め、それぞれについてその方式を詳細に定めています。
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① 普通方式の遺言
普通方式の遺言とは、平穏な日常生活を営んでいる通常の状況のもとにあるときに作成される遺言のことで、以下の3種類があります。
- (1)自筆証書遺言(民法968条)
- (2)公正証書遺言(民法969条)
- (3)秘密証書遺言(民法970条)
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② 特別方式の遺言
特別方式の遺言とは、死亡の危機が迫っているなどといった日常ではない特別な状況下において作成されるものです。
ここでは、取り上げません。
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【05】自筆証書遺言について
- 01自筆証書遺言とは
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自筆証書遺言とは、遺言をしようとする人が、遺言内容の全文、日付、氏名を自書し、署名の下に押印して作成する遺言のことをいいます(民法968条)。
その要件は、以下の通りです。
この要件を一つでも欠くと遺言は無効になってしまいます。-
① 自書であること
これは、遺言の全文、日付、氏名が自筆で記載されていれば、その遺言が遺言者本人の真意に基づき作成されたことが担保されるという理由に基づきます。
したがって、遺言の加除、その他の変更がある場合は、遺言者がその場所を指示し、これを変更した旨を付記して署名し、かつその変更場所に押印しなければならないことになっています(民法968条2項)。
なお、2020年法改正により、遺言書と一体のものとして相続財産の目録を添付する場合には、その目録については自書する必要はなくなり、パソコンで作成したり、通帳をコピーするような方法でもよいことになりました。ただ、相続財産の目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、押印する必要があります。 -
② 日付の記載があること
日付の記載が要求されるのは、第1に、遺言をするときに、遺言者が遺言のできる意思能力(遺言能力)を備えていたかどうかを判断するためです。
第2に、複数の遺言が作成された場合に、遺言者の最終の意思を記載した遺言がどれであるかを判別するためです。 -
③ 署名と押印があること
これは、遺言が遺言者の真意に基づき作成されたかを明確にするためです。
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- 02自筆証書遺言の長所と短所
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① 長所
- 簡単に作成できる
- 誰にも知られずに作成できる
- 費用がほとんどかからない
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② 短所
- 遺言者の死後、発見されないおそれがある
- 隠匿されるおそれがある
- 方式の不備により無効になったり、遺言者の意図した効果が得られないおそれがある
- 遺言時の遺言能力に関して争いが生じるおそれがある
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- 03検認手続
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自筆遺言書の保管者は、相続の開始を知った時は、遅滞なくこれを家庭裁判所に提出して、その検認を受けなければなりません(1004条1項)
遺言書の保管者がない場合でも、相続人がこれを発見した場合も同様です。
また、封印のある遺言書は、家庭裁判所において、相続人またはその代理人の立会がなければ開封することができません(1004条3項)
なお、法務局での保管制度を利用すると、家庭裁判所での検認手続きが不要になります。
【06】公正証書遺言について
- 01公正証書遺言とは
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公正証書遺言は、法律の実務に精通した公務員である公証人の関与の下で作成される遺言のことをいいます。
その要件は次の通りです(969条、969条の2)。- ①遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授(くじゅ、口頭で申し述べる)すること
- ②2名以上の証人の立会いがあること
証人は成年者であることが必要で、遺言者の推定相続人、受遺者、これらの配偶者及び直系血族は証人になれません。 - ③公証人が、遺言者の口述を筆記し、その筆記した内容を遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること
- ④遺言者及び証人が、公証人の筆記した内容が正確なことを承認した後、それぞれが署名し、押印すること
- ⑤公証人が、上記①から④までの方式に従って公正証書を作成したものである旨を付記して、これに署名、押印すること
- 02公正証書遺言の長所と短所
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公正証書遺言の長所と短所は、以下の通りです。
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① 長所
公証人が作成するので、遺言者の求める法的効果が達成できるように法律が求める要件を満たしたものになるとともに、遺言の内容もが明確になります。
公証人に加え、利害関係のない2名以上の証人も参加して作成されるので、遺言者の真意で作成されたものであることが明白になります。
遺言書の原本は公証人役場で保管されるため、紛失、盗難の心配や、偽造、変造のおそれがありません。
日本公証人連合会が主体となって運営されている検索システムがあり、相続人などの利害関係人は、その有無を照会することができるので、遺言書が発見できないということはありません。
家庭裁判所での検認手続を行う必要はありません。 -
② 短所
いつでも、どこでも簡単に作成できるものではありません。
戸籍謄本その他の公的な文書の用意、公証人との打ち合わせ、公証人に対する口授などが必要になります。
2名以上の証人の立会いが必要です。
秘密裡に遺言書を作成することができません。
公正証書作成費用がかかります。
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- 03検認手続等
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公正証書遺言の原本は、これを作成した公証役場で保管されます。遺言者は、原本の写しである正本ないし謄本の交付を受けることができます。
遺言者の死後、家庭裁判所における検認手続は不要です。
【07】秘密証書遺言について
- 01秘密証書遺言とは
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秘密証書遺言とは、遺言者が遺言の内容を生前は秘密にしたいが、その存在だけは明らかにしておきたい場合に作成される遺言のことをいいます。
その要件は、以下の通りです(970条)。- ①遺言者が、遺言書を作成し、これに署名し、押印します。
- ②遺言者が、その遺言書を封筒に入れて封じ、遺言書に押捺した印章をもってこれに封印をします。
- ③遺言者が、公証人1人及び証人2人以上の前に封じられた封書を提出して、その封書が自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述します。
- ④公証人が、その遺言書の提出された日付及び遺言者の申述(提出された封書が自己の遺言書であり、自己が筆記したものである)を封紙と呼ばれる書面(公正証書)に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名押印し、封筒の封じた部分にこの封紙を貼ります。
- ⑤以上の手続を経た後、公証人か遺言者に封紙の貼られた封書が返還されます。
- ⑥この遺言書は、自筆である必要はなく、ワープロ打ちされたものでもかまいません。
- ⑦この遺言書の加除、その他の変更は、遺言者がその場所を指示し、これを変更した旨を付記して署名した上で、その変更場所に押印しなければなりません。
- 02秘密証書遺言の特徴
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秘密証書遺言は、遺言書の封入に関して公証人が一定の関与を行いますが、遺言の方式や内容には関与しないため、誰にも遺言内容を知られることはありません。ただ、その反面、公証人がその方式や内容を確認することはしませんので、自筆証書遺言と同様に、遺言者の意図した法的効力が得られないというリスクが生じます。
また、遺言書が公証人役場で保管されるわけでないため、紛失のリスクもあります。
- 03検認手続
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遺言者の死亡後に、家庭裁判所で開封、検認手続を行う必要があります。
【08】遺言を作成するための事前準備について
- 01財産の洗い出し
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遺言を作成する前提として、財産の洗い出しを行う必要があります。
自身の財産がどのようなもので、その価値がいくらぐらいのものであるかを把握します。
その主なものは下記の通りです。- ①不動産
- ②金融資産
- ③自社株関係
- ④その他財産
ゴルフ会員権、書画骨董品、貴金属 - ⑤保険関係
- ⑥債務
- 02財産目録の作成
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上記の資産と債務をリスト化し、それらの評価額を記載した財産目録を作成します。
【09】遺言の内容の検討[一般論]
財産目録を作成したら、どの財産を誰にどのぐらい渡すかを検討します。
妻が住んでいる居住用不動産は、できたら妻の単独所有にするのが適切でしょう。自社株は、後継者たる子が単独で継承するのが理想です。金融資産については、「預貯金は、2分の1を妻に、4分の1ずつ長女、長男に相続させる」というように、割合で指定するのが一般的です。
債務については、これも遺言のない場合は、法定相続分の割合で各相続人が承継することになります。ただ、遺言でこの割合を変更することもできます。たとえば、事業を単独で承継し、自社株を単独承継した子が事業関係で負担した債務の全てを承継することにするなどです。
ただし、これは相続人間での内部的な取り決めにすぎず、対債権者との関係では効力がありません。債権者は、法定相続分に基づいて各相続人に対して請求する権利があり、遺言で指定された割合に拘束されることはありません。
なお、特定の相続人に財産の大部分を承継させる場合、他の相続人の遺留分を侵害することになる場合があります。また、評価の高い不動産を取得した相続人が相続税を支払えるかも検討課題になります。
【10】遺言書の内容の検討[具体論]
上記の通り、遺言書を作成するにあたっては、次の4つの問題点を検討しなければなりません。
すなわち、財産・事業の承継の問題(希望する者に財産・事業の承継ができるか)、債務承継の問題(承継した財産・事業の割合により適切な債務負担の割合による承継ができるか)、遺留分の問題(相続人の遺留分を侵害しないか)、相続税の納税の問題(相続人が相続税を納税できるか)という問題点を検討する必要があります。
- 01財産・事業の承継の問題
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① 事業の承継
事業の承継をする子に自社株を承継させる場合は、自社株の評価を適正に行っておく必要があります。不動産や金融資産と異なり、市場価格といった客観的な評価基準がない場合が多く、その評価額の相続財産全体に占める割合が曖昧であるため、遺留分侵害の問題が発生するリスクがあるでしょう。
また、ここでも事業を承継する相続人が相続税を支払えるかという問題が生じます。 -
② 不動産の承継
不動産の承継に関する検討事項は、不動産を承継した相続人が、他の相続人の遺留分を侵害することにならないかを検討すべきです。また、対象不動案の評価額が高い場合、承継する相続人が相続税を支払えるのかと言う問題もあります。
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③ 金融資産の分配
金融資産の配分に関する検討事項は、事業承継者に対する資金繰り資金の付与という観点、老後の面倒を見てくれた相続人に対するお礼的な意味合いの観点、相続財産全体の配分の中での調整金的な観点などを総合的に検討する必要があります。
また、生前贈与がある場合は、これを受けていないものとの公平性の観点からの検討も必要となるでしょう。
さらには、金融資産は現金化が容易で納税資金となるものですから、この点の考慮も必要となるでしょう。
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- 02債務の承継
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債務の承継についてはすでに説明した通り、相続人が一方的にその承継の有無や割合を決定することができませんので、債務の公平な負担という観点から、生前から工夫をしておくことが必要です。
ローンが残っている居住用の土地建物については、居住のためにこれを取得したものが単独で債務は承継するのが公平でしょうから、そのように遺言をしておき、死後は相続人が金融機関と協議をしていくことになります。事業に関する債務(保証債務を含む)についても同じ配慮が必要になります。
- 03遺留分について
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① 遺留分とは
遺留分とは、相続人が相続に際して法律上取得することを保障されている相続財産の一定割合のことをいいます。これは、遺言者の意思によっても奪うことはできません。遺言により遺留分を侵害された相続人は、遺留分を侵害する他の相続人に対して遺留分侵害額の支払いを請求することができます。
全ての相続人に認められているわけではなく、子または孫、親と配偶者だけで、兄弟姉妹にはありません(民1028条)。遺留分の割合は、原則は法定相続分の2分の1ですが、親のみが相続人の場合は法定相続分の3分の1です。
したがって、遺言制度が、遺言者が自己の死後の財産処分をその意思で決定できる制度であるとしてもそこには制限があり、一部の相続人(例えば、事業を承継する長男)にほとんどの財産を承継させるような遺言は、他の相続人の遺留分を侵害してしまうことになります。
遺留分を侵害された相続人は、請求することによって、侵害された限度で遺言の効力を失わせることができます。この請求を遺留分減殺請求といいます。 -
② 遺留分の具体例
相続人が、妻、子3人(長男、二男、三男)の場合は以下のようになります。
- 妻の遺留分:法定相続分1/2×遺留分割合1/2=1/4
- 長男の遺留分:法定相続分1/6×遺留分割合1/2=1/12
- 二男の遺留分:法定相続分1/6×遺留分割合1/2=1/12
- 三男の遺留分:法定相続分1/6×遺留分割合1/2=1/12
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③ 遺留分侵害を避けるために
遺留分侵害を避けるためには、まずは遺言者の自由意思で相続財産の分け方を決定したのち、その結果ある相続人の遺留分侵害のおそれがある場合には、金融資産の分け方で調整するなどして遺留分侵害のないように工夫をすることになります。
また、個人事業を承継する長男に大方の財産を承継させ、これにあわせて大方の債務も承継させることにより、実質的に遺留分の侵害のない内容の遺言書を作成したとしても、債務は法的相続の割合によりいったんは各相続人に承継されますので、遺留分侵害の回避することにはなりません。この場合は、遺言者の死後の遺留分減殺請求の中で協議をしながら、債権者の承諾を得て実質的な解決を図るしかないということになります。
また、例えば、子供が独立したあとに、夫婦が居住している土地建物が唯一の相続財産であるような場合に、これを妻に単独所有とさせたいと考えても、子の遺留分を侵害することになります。こうした場合、遺言書の中に、「お母さんが住んでいるこの土地建物は、お母さん単独所有とするので、子供たちは遺留分侵害額請求などしないようお願いする。」というように、遺言者の希望を書いておくことができます。これは、法的な意味での効果はありませんが、遺留分減殺請求権は、相続人が請求することによってはじめて減殺の効果が発生するのであり、請求しなければ発生しませんので、一定の事実上の効果は期待できるでしょう。
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- 04相続税の納税の問題
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上述の通り、遺言の内容を検討するにあたっては、各相続人にその内容通りの承継がなされたとしても相続税の支払いが困難であるという場合は、遺言者の意思は、絵にかいた餅となってしまいます。これを避けるためには、相続税の課税を事前に把握し、その額を考慮しつつ遺言の内容を検討する必要があります。また、相続税軽減策や税法上の特例を利用するためには、税法の規定を検討しつつ、遺言の内容を検討する必要があります。
【11】専門家の支援が必須であること
以上見てきました通り、遺言を行うに当たっては、自分に適した遺言の方式を選択し、遺言事項を決定し、自分の意図する通りの遺言の効果が発揮されるように遺言の方式を履践して証書を作成し、遺言を作成するための事前準備として財産の洗い出しと評価を行い、遺言の内容を決めるにあたっては、適切な内容の配分を検討し、これにあわせて債務の適切な負担も考慮し、さらには遺留分の問題、相続税の問題など検討する必要があり、これら一連の作業は極めて専門的な支援が必要となる場合がほとんどです。
素人が安易に遺言書を作成すると、意図した遺言の効力が発揮されないとか、最悪の場合は全体が無効となってしまうこともありえます。また、遺留分侵害が生じたために、せっかく遺言を行ったものの結局は紛争の回避を避けられないことになってしまうこともありえるでしょう。また、相続税が払えないためにその内容が画餅に帰してしまうことにもなりかねません。
そうしたことを回避するためには、専門家の支援がどうしても必要となります。
我々は、法的観点からは当然のこと、相続税の処理に精通した税理士と共同しておりますので、相続税の観点からもあわせて検討して、サポートの提供をいたしております。
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-
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- 02
- ご面談日程の調整
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お問い合わせをいただきましたら、2~3日前後でこちらからご連絡させて頂きご面談日程を調整致します。
- 03
- 正式依頼までの相談は無料です
-
具体的な相談内容をお伺いし、今後の対応や対策をご提案します。ご相談いただいた後、内容にご納得いただいた場合は再度ご連絡を頂き正式に依頼をお引き受け致します。
よくある質問
- 相談時の費用はいくらになりますか?
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正式に受任するまで費用は一切かかりません。まずは気軽な気持ちでお問い合わせください。専門的な手続きが必要な分野で、お一人で悩まないでください。
- 遺言書作成支援の報酬はいくらになりますか?
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ご依頼内容により変動します。
自筆証書作成支援の場合は、165,000円(消費税込み)~となります。
対象財産の評価、遺留分侵害の回避の検討、相続税額の試算、節税スキームの構築などを具体的に検討し、見積もりを用意したのちに協議をさせていただきます。なお、公正証書作成支援につきましては、220,000円(消費税込み)~となります。
- 遺言書の保管を依頼することはできますか?
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月額 5,000円で承ります。弊所ビル内に設置された耐火金庫内で保管します。
- 相談をする際、事前に準備するものはありますか?
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家族構成、対象財産の概括的なリストをご用意ください。
遺言書作成支援料金表
遺言書 作成 |
自筆証書 作成支援 |
165,000円(消費税込み)~ 対象財産の評価、遺留分侵害の回避の検討、相続税額の試算、節税スキームの構築などを具体的に検討し、見積もりを用意したのちに協議をさせていただきます。 |
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公正証書 作成支援 |
220,000円(消費税込み)~ |
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遺言書 保管 |
月額 5,000円 |